20世紀末に、東京工業大学・応用セラミックス研究所のグループは、固体材料のハイスループット実験のためのナノテクノロジーとコンビナトリアルテクノロジーの高度なハイブリッド化技術を提案し、JSTからの大きな助成金(1996年から2001年)を受けて、高温超伝導ペロブスカイト酸化物など固体材料の高速材料探索に多大な成果を挙げてきました。続いて東京工業大学とNIMS物質・材料研究機構の7年間の共同国家プロジェクトを行い、コンビナトリアル・レーザーMBEが、統合ナノテクノロジーの概念を実現するために開発され、無機、金属、半導体、および有機物をカバーするさまざまな固体材料のスクリーニングと新材料の発見等の研究開発業績を挙げてきました。すなわち、我々はこの技術を、Solid State Nano Combinatorial Technologyと名付けました。この技術は、例えば、セラミクス機能材料の開発において威力を発揮します。金属、半導体、ポリマーから成る典型的な機能性材料とは対照的に、セラミックスは優れた熱安定性を有するものの、非機能性(構造)材料であると長い間認識されてきましたが、ペロブスカイト構造のセラミック:ABX3:(X = O、ハロゲン化物および水素化物:H-)は、超伝導、巨大磁性、光電子特性などの新機能特性を示すことがわかりました。ペロブスカイトの結晶構造と機能特性は、元素置換、欠陥、非化学量論組成、表面のナノ構造、界面、および原子・分子層の積み重ねに非常に敏感であるため、材料創製条件を広汎かつ精密に変化させてナノ計測・評価を必要とすることから、ナノテク技術とコンビナトリアル手法とを結合するハイブリッド手法は、迅速なスクリーニングのための強力な技術になります。
21世紀に入ると、エレクトロニクスの進化に伴う情報、データ科学の進歩は、硬い「モノづくり」ばかりでなく生体医用材料やゲノムなどのソフトマテリアル研究、マテリアルインフォマティックス(MI)、人工知能(AI)の出現に伴う新世界(G5)を生み出しています。
このように、Smart Combinatorial Technologyは、材料科学・イノベーション創出に向けて「打ち出の小槌」であるという認識を持つに至り、2018年に、エスシーティー株式会社(Smart Combinatorial Technology, Inc.)を創設しました。
前期コンビナトリアルナノテクノロジーの成果をベースに、2007年に創立したベンチャー(株)コメットに続いて、装置の自動化、データの集積制御、MI/AIへの展開を目的とする研究開発型スマートベンチャーが、エスシーティー株式会社です。日本の科学技術の復興、国際競争力の高い新製品開発、地域復興を目指しています。当社は未だ非常に小規模ですが、2019年には国家プロジェクトを受注し、国のイノベーション創出に貢献すべく、連携機関の協力を得て頑張っております。皆様の多大なご支援を賜りますようお願い申し上げます